可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 今はそんなこと、できる自信もなかった。

(私の幸せって、彼らがいるところなんだわ)

 ヴァンレックがいて、アリムがいて、彼らのためにどうすればいいのか考えて動く日々だった。支えたいと行動していたら、ブロンズたち大公家に勤めるみんなも大切になって――。

(この先もずっと、支えていけたら)

 お飾りの妻ではない。

 女主人として屋敷を、大公妃として領地を――。

 その時、建物が本当に揺れたのではないか思うほどの大きな音がして、アイリスはビクッとした。

「い、今の何……!?」

 アイリスが窓のほうを見ると、反対側の扉がドカーンッと蹴り破られる勢いで、開く。

「きゃああああ!」
「大公妃様ああああああ!」

 野太い男たちの合唱が、アイリスの悲鳴に被った。

(何、本当になんなの!?)

 ティーカップがテーブルの上に落ちた。紅茶の少ない残りが、小さな池を作る。

 あまりの突然のことで腰が抜けて動けなくなった。

 アイリスは出入り口に顔を向け――驚愕する。
< 361 / 381 >

この作品をシェア

pagetop