可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「成長しないと本来の姿になれなくて、魔法もほとんど使えないのっ。自分を守ることさえできないから隠しているほうが安全でっ」
「魔法……」

 そういえば彼が、ヴァンレックがいた牢に送り届けてくれたことがあったのをアイリスは思い出す。あれは獣人族の秘密の力のその一でも二でもなく、〝魔法〟だったみたいだ。

 すると、目の前で狼が光った。

(まさかっ)

 アイリスがハッと思った次の瞬間、そこにはアリムを片腕に抱えたヴァンレックの姿があった。

「きゃー!」

 アイリスは、別の意味で悲鳴を上げてしまった。

「大公っ、どうしてそこで戻るんですかっ」

 ああもうほんと困った人だなー!と笑顔を張りつかせたままリッジソロミュー公爵が言う。彼と、そして近くにいた男たちが、騎士も貴族も問わずヴァンレックを一瞬で取り囲んだ。

 次にヴァンレックが見えた時、彼は丈の長い衣装を上からかぶされていた。

 しかし、アイリスは真っ赤になって動けないままだ。

(み、見えたような、見えなかったような……!)

 恥ずかしさのあまり詳細の記憶は飛んでいる。

 でも、ヴァンレックの肉体美は網膜に焼きついていた。
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