可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「アイリスっ、嘘を吐いたから見限ってしまったのか!?」

 ヴァンレックは服のことについて周囲の男たちに礼を言うなり、アイリスのもとに駆けてきた。

「すまなかった、本当に申し訳なっ――」
「ま、待って、急に寄ってこられたらさっきの思い出しちゃうから!」
「頼む聞いてほしいっ、俺の子だと答えたが、実は神獣なんだ!」

 ヴァンレックがアリムを両手で前に突き出し、必死にそう言ってきた。

 アリムが申し訳なさそうな顔で、指同士を合わせる。

「ごめんねアイリス、僕の本当の名前は『ヴァルトクス』なんだ。獣化できる王家の人間がこの家名をいただくのは、神獣の名前を取っていて……僕はヴァンレックの子供じゃないよ。僕をヴァルトクスと呼ぶのは畏れ多いしややこしなるからって、アリムって名前をつけてくれたんだ」

 アイリスは言葉を失った。

 初めて自己紹介をされた際、アリムは間違って苗字を名乗ったのだと思っていた。

 みんなは『神獣様』と呼んでいた。

 しかし本来その存在は『ヴァルトクス様』と呼ばれていたのだろう。
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