可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 隣に座ったヴァンレックが身を乗り出す。

「俺は、もう可愛くないと……!?」
「ヴァンレック様、落ち着いてください」

 アイリスは疑問符を頭に浮かべ、ひとまず言った。

「いや、もしかしたら余計なことをしたのかもしれないと心配に――」

 ブロンズが目と仕草で合図してくる。

 頭を撫でろ、と。

 不思議に思いつつアイリスがヴァンレックの頭に手を置くと、挙動不審に早口で何やら喋りまくっていた彼が、途端に静かになる。

(何これ、可愛いわ)

 褒められたかったのだろうか。

 それとも、アリムに対抗して……?

「失礼じゃなければ、もっと撫でますけど」
「撫でてくれ」
「なんて早い返答」
「アイリス! 僕も自分でしがもみつくから、撫でてっ」
「ふふっ、はいはい。二人とも、今日はお疲れ様」

 とにかく、とアイリスは手を動かしながら言葉を続けた。

「二人がしてくれたことにはすっきりしたわ。まさか悪女の悪評もどうになってしまうなんて、思ってもみなかったことですし」
「そもそもアイリスは悪女ではないだろう」
「え?」

 アイリスは本気で驚いてしまった。
< 373 / 381 >

この作品をシェア

pagetop