可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 するとアリムが彼女の腕にしがみつく。

「えーっ、パパ帰ってきたら騎士団のところか書類処理でしょ? それまで僕、アイリスと待ってるからっ」

 さすがのアイリスも心の中でちろりと泣いた。

(たったわずかの間に信頼されたのは嬉しいけど……でもぉ……っ)

 ヴァンレックの眼光が、小動物をロックオンする肉食獣にみたいになっていっている気がする。

「アリム、彼女がママのほうがいいだろう?」
「もちろん!」
「それなら、パパとママは話し合わないと。ブロンズと部屋に戻ってくれるか?」
「そういうことなら仕方ないねっ」

 聞き分けよくアリムがアイリスの腕から離れた。驚いたような目をしたのはヴァンレックだけでなく、ブロンズもだった。

「珍しいですね坊ちゃま……聞きわけがよくて助かります」

 どこか呆けたようにブロンズが言って、アリムを引き取る。

「夫人は、こちらに」
「は、はい……」

 向き合ってみるとヴァンレックは想像よりずっと身長が高い。

 アイリスは生きた心地がしないままついて歩いた。
< 39 / 381 >

この作品をシェア

pagetop