可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 夫人、という言い方からしてすぐに追い出されるような叱責はされなそうだとは感じていたものの、考えてもわけが分からなすぎて、間の抜けた声が出た。

 アイリスは強制結婚で寄越された妻であり、アリムは彼が愛した女性との間に授かった愛しい我が子だ。

 ヴァンレックが、軽く握った黒い手袋の拳を口元に寄せて「んんっ」と咳払いする。

「急な結婚で君も戸惑ったことだと思う。国王の命令を断れずここには来たという印象を感じたが、それは事実で間違いないな?」
「も、もちろんです。私なんかがアリムの実の母になれるはずもございませんっ。あ、も、申し訳ございません。大切なご子息様を。小公子様でござまいす」

 慌ててアイリスは頭を下げる。

 ヴァンレックが、またしてもじーっと見つめてくる。

 向き合ってみると、改めてとてつもなく美しい男であると分かる。さすがのアイリスも忘れていた乙女心がくすぐられて恥ずかしくなる。

「な、なんでしょう……?」
「アリム、で構わない。あの子にそう言われたのだろう?」
「そ、そうです」

 見ていたわけでもないのにさすがの洞察力だなと思って、こくこくとうなずく。

「君に、子育ての協力を要請したい」
「わ、私に協力を」

 まさかの提案に動揺し、言葉が詰まった。
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