可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 そんなアリムの声に、ハタと我に返る。

 というか違和感を覚えた。

 少し腕を緩めてアリムを見てみると、本気で恥ずかしそうだ。しかしながら尻尾は左右に揺れていて照れているだけなのも分かる。

(……もしかして旦那様『可愛い』と言ってない?)

 いや、まさか、そんなことはないだろう。

「可愛いから、可愛いと言うのよ。恥ずかしがる必要はないわ」

 アイリスは気を取り直して、アリムをもう一度ぎゅっと抱き締めてから、優しく床に降ろした。

「……そう、かな?」
「ええ、そうよ」

 小さな手を後ろに持っていき、もじもじする彼も口元が緩みっぱなしだ。嬉しいのだろう。

 それなら惜しみなく愛情を表現していこうと、アイリスは改めて決意する。

「今日は探索しない? 分からないところがたくさんあるの」
「アイリスがそういうなら仕方ないな。僕に任せて!」

 アリムが目を輝かせる。

(今日私と何ができるのか、楽しみにしてくれていたみたい)

 少し離れている間に元の距離感に戻っていかないか不安だったが、メイドたちが相談してくるほど確かにアリムはアイリスを信頼しているらしい。
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