可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
(よくここにきて、本と実物を眺めて楽しんでいるのね)

 彼は植物に興味があるのだろう。

「どんな植物があるの?」
「あとで教えてあげる」

 あら、とアイリスは意外に思う。

「この先に進むと、植物の赤ちゃんが休んでいるところがあるんだ」

 騎士たちが言っていた苗のことだろう。

 アリムは、この前より育っている植物があるかもしれないと言って、アイリスの手を掴んで走り出した。

 豪華絢爛な宮殿みたいな大きな邸宅。そこにあるとは思えない、まるでリゾートに来たような植物園――。

(ここだけ別世界みたいだわ)

 アイリスは一面のガラスから注ぐ木漏れ日を見やる。

 とても素晴らしい温室だった。

 外からは見えず、静かで、それを感じているとなんとなくヴァンレックが私服でくつろいでいる姿が想像された。

 条件を考えると、彼らしい空間にも感じる。

(彼は、どんなことがお好きなのかしら)

 アリムの背へと視線を戻すと、揺れる美しい銀髪と尻尾がそこにはあった。
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