可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
「あなた様が感じておられるように――ただ『最悪だ』としか」

 二人は視線を交わすと、同時にため息をもらす。

「おやめくだい。悪女と有名なお方でしたらのちの離縁もたやすいですし、陛下の配慮も感じます。気を引き締めていきましょう」

 執事が励ますように言葉を挟んだ。

「ブロンズ、陛下の策なのは理解したが、正気か? 俺に隠し通せると思っているのか?」

 すると二人は同時に口を強くつぐむ。

「……なぁ、お前たち?」
「はい」
「はい」

 それぞれ二人がヴァンレックに答えた。

 ヴァンレックは、疑い深い目で観察しながら、問う。

「この嘘を、吐き通せると思うか?」

 二人が互いの顔を見合った。室内に、数秒沈黙が漂う。

「もうその沈黙がすべて物語っているっ。絶対に無理だっ」

 絶望した声を上げ、ヴァンレックは頭を抱えて書斎の椅子に腰を落とした。

「旦那様、『ヴァルトクス大公』とあろうお方が、そのように情けなく取り乱してはなりません」
「まぁ、ギリ親子で押し通せそうではありますよね」

 とはいえ『今後どうなるのだろう』と、二人の顔にも不安が浮かんでいることはヴァンレックも見ていた。

「俺は戦っているほうが楽なんだがなぁ……そのあとの考えについても、どうせまた陛下は俺に全投げするつもりなんだろうな」

 恐れられているヴァルトクス大公は頭が痛い様子で呟いた。
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