可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 彼は不満はないと言っていたが、報告に不足を感じた箇所でもあったのだろう。

 詳しく聞きたいのかもしれない、アリムとブロンズたちが待つ池のほうへと向かいながら、そうアイリスは思った。

 ◇∞◇∞◇

 何やらもやもやする。

 騎士団側の執務室に入ったヴァンレックは、何もする気が起きず、長椅子にどかりと深く腰を降ろした。

「はぁ……」

 椅子の背に頭をもたれ、顔に手をあてる。

 ここ数日見ていて実感した。

 アイリスの関心は、アリムにしかない。

 恐れても、戦場や必要な場でなければ暴れないだろうと期待し、女性たちはヴァンレックに関心を向けた。

 欲を抱えた視線、品定めするような熱い眼差しは気持ち悪かった。子供がいるという噂が立つ前はうんざりしたものだ。

 数日同じ家で暮らしているのに、アイリスと接したのは僅かな時間だった。会話だってとても短い。

 そう気付いて、まったく気に留められていないのだと察した。

 彼女が『悪女』であることを、昨日と一昨日もたびたび頭から抜けていたほどだ。

「……アリムとはよく話すのに」
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