可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 そう、思っていたのだが――。

「……もやもやする」

 頭に浮かんだのは、見ていても分かるくらいかなり長い時間を共有しているらしいアリムと、アイリスのことだ。

 放っておいてくれるのは助かるはずだ。

 彼女がアリムをうまく見てくれているし、ヴァンレックがいない間もおやつやごはんを食べてくれるのなら彼も育っていく。

 それなのに、アイリスに興味を持ってもらえていないことが、面白くない。

 まるで少し前『離れないで』とひねくれていたアリムみたい――。

(あ、そうか。俺はすねているのか)

 しっくりくる感覚で納得したヴァンレックは、直後に驚愕した。

 違和感ならいくつも覚えている。

 契約に不備がないよう指摘した彼女は、悪女とは感じなかった。

 先程、ベリーパイを食べながら、アリムを見守っていたアイリスの顔は穏やかでただただ美しく――。

 だから目を奪われて、ヴァンレックは一直線にそちらを目指した。

 その時、ノック音がした。

「よろしいでしょうか」
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