可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
(まぁ、まずは幸せになることが目標よね。悪女呼ばわりの元凶になったこの忌々しい家が出るっ、それから生き残ることを考えて……)

 このまま屋敷に残る選択肢はない。

 だが、脱出の理由である結婚相手が、最悪だ。

「午後には出発できてしまえそうですね」

 執事の声が聞こえて、ハッとして振り向く。

「できるだけ早く発ちたいの。すぐにでも出発できるよう、馬車も準備させて」
「お嬢様は……よろしいのですか?」

 彼の目が心配そうにうかがってくる。

「ええ。見ての通り、私は恐れていないでしょう? 吹っ切れたの。もう何も期待していないし、だから傷ついていないわ。ここを出て、きっと幸せになってみせるから」

 そう答えると、執事がハンカチを目尻にあてた。

「お嬢様はまるで生まれ変わったようです。なんとたくましいお姿でしょう……我々も同じ考えです。ここに、居続けてはいけません」

 推測してはいたが、やはり『アイリス』には味方もいたらしい。

 ざっと見た限りきちんと世話をされて爪の先まで綺麗だ。
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