可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 だが、そんな心の用意は必要なかったらしい。

 その夜、ダイニングルームで三人の夕食があったのだが、審査されるような視線をヴァンレックからは感じなかった。

 同じ食卓についた際に緊張はあったものの、意外と普通だった。

 使用人たちは、成婚してようやく夫婦が揃った〝家族〟の食事に、ほっとしているのも見受けられた。

 どうやら『子息が新しい母親に慣れる間の期間が置かれた』とメイドたちは思っているようだとは、アイリスは寝支度の際に聞いて分かった。

(まぁ会話だってあるし……?)

 夫に冷遇されている妻だとしたら、こんな好待遇はなかったはずだ。

 化粧台の前、メイドに髪に櫛を入れられているアイリスは、湯浴みのぽかぽかとした心地で今にも眠りたい心地だった。

 子供と遊ぶのも体力がいるし、かといって引きこもりのうえこれまで栄養不足だったこの身体は、体力がなさすぎる。

 だが、ここでそのままメイドたちの世話に甘えて、眠りこけるわけにもいかない。
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