恋は手のひらの上で
言いたいことも分からなくはないけど、そこで折れたら負けな気がして抵抗してみる。
でも、紗英の方が一枚上手だ。

「芽依がこんなにソワソワしてるの、仕事以外で見たことないよ」

それに関しては、返す言葉もない。


私がペンを握りしめていると、ふと紗英が小さい声でつぶやいた。

「ちゃんと、聞いてきなよ」

「なにを?」

「彼女いるかどうか」

途端に心臓が痛くなる。なんて素直な、自分の体。

「聞けないよ」

「聞くのよ」

「どうして聞かなきゃいけないの?」

「好きになる前に、確認しておきなさい」

私と紗英の目が合う。
なにも言ってないのに、彼女は先に続けた。

「まあ、もう遅いかもしれないけど」

紗英はにやりと笑う。


私は机の上のスマホを、そっと裏返した。
画面には、来週水曜の予定が光っていた。



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