恋は手のひらの上で
「まず、発売スケジュールですが。当初予定より、一週間前倒しにする案を考えています」

「え?」

思わず顔を上げた。
高橋も同じだった。

「早くないですか?」

「はい。ただ、理由があります」

市場分析のグラフが映る。

「現在、同カテゴリの商品が来月二社から出る予定です。ただし、“敏感肌向け”のセグメントはまだ空いている」

私は画面を見て、すぐに気づいた。

「まだ空いてますね」

「その通りです。西野さんの処方は、この層にかなり強い。だから先に出す価値がある」

胸の奥が少し熱くなる。
一方で、高橋が腕を組んだ。

「…工場は?」

「すでに調整しています。もし今日ここで問題がなければ、すぐ動けるように」

その答えに、高橋が小さく笑った。

「相変わらずだ。全部、先に決めてきますね」

椎名さんは肩をすくめる。

「こういうのは、準備が九割ですから」

この人は、本当にすごい。
市場も、タイミングも、製造も、全部見ている。


< 127 / 228 >

この作品をシェア

pagetop