恋は手のひらの上で
「本当にすみません」
もう一度言うと、椎名さんは少し困ったように笑った。
「俺が勝手にやったことですから。それより」
彼は思い出したように、ふと私の顔をじっと見る。
「体調はどうですか?」
「…はい。大丈夫です」
ここは、絶対に無理を言ってでも帰らなきゃいけない場面だ。
そう思って答えたのに、あっさり「ほんとに?」と怪しまれた。
「顔色、良くないです」
「は、はい。嘘です。…頭が痛いです」
彼の前では下手に嘘はつけない。ついたところで簡単に見破られるのだから。
正直に答えると、椎名さんはすぐにうなずいた。
「今日は土曜日なので、会社は休みです」
当たり前のことなのに、なぜか少し安心する。
「少し休んでから、病院に行きましょう」
「えっ」
びっくりして、部屋のどこかに時計がないか探す。
見当たらない。
「だめです、そこまでしてもらうのは」
「行きます」
椎名さんにしては、きっぱり言い切った。
有無を言わさずそう聞こえるようにしているのは分かる。声がやわらかいからだ。
「昨日の様子を見ると、その方がいい」
そう言ってから、少しだけ表情を緩めた。
「西野さん、まだふらつきそうなので。立つときは呼んでください」
胸が、変な音を立てた。
「昨日みたいに倒れられると困ります」
昨日のすべてが思い出される。
会社の会議室を出たところで倒れ、応接室へ運ばれ、そこで急きょ帰ることになったことも。
彼に支えられながら歩いたことも。
遠慮がちに腕を支えられたことも。
つきたいため息を、必死にこらえる。
気を取り直すつもりでいったんベッドの縁に座り直すと、椎名さんがふと眉を寄せた。
「顔、赤いですね」
「え?」
自分では分からない。
彼はソファから立ち上がり、こちらへ向かってきた。
「ちょっと失礼します」
するりと椎名さんの手が近づいた。
次の瞬間。
椎名さんの手が、額に触れた。
もう一度言うと、椎名さんは少し困ったように笑った。
「俺が勝手にやったことですから。それより」
彼は思い出したように、ふと私の顔をじっと見る。
「体調はどうですか?」
「…はい。大丈夫です」
ここは、絶対に無理を言ってでも帰らなきゃいけない場面だ。
そう思って答えたのに、あっさり「ほんとに?」と怪しまれた。
「顔色、良くないです」
「は、はい。嘘です。…頭が痛いです」
彼の前では下手に嘘はつけない。ついたところで簡単に見破られるのだから。
正直に答えると、椎名さんはすぐにうなずいた。
「今日は土曜日なので、会社は休みです」
当たり前のことなのに、なぜか少し安心する。
「少し休んでから、病院に行きましょう」
「えっ」
びっくりして、部屋のどこかに時計がないか探す。
見当たらない。
「だめです、そこまでしてもらうのは」
「行きます」
椎名さんにしては、きっぱり言い切った。
有無を言わさずそう聞こえるようにしているのは分かる。声がやわらかいからだ。
「昨日の様子を見ると、その方がいい」
そう言ってから、少しだけ表情を緩めた。
「西野さん、まだふらつきそうなので。立つときは呼んでください」
胸が、変な音を立てた。
「昨日みたいに倒れられると困ります」
昨日のすべてが思い出される。
会社の会議室を出たところで倒れ、応接室へ運ばれ、そこで急きょ帰ることになったことも。
彼に支えられながら歩いたことも。
遠慮がちに腕を支えられたことも。
つきたいため息を、必死にこらえる。
気を取り直すつもりでいったんベッドの縁に座り直すと、椎名さんがふと眉を寄せた。
「顔、赤いですね」
「え?」
自分では分からない。
彼はソファから立ち上がり、こちらへ向かってきた。
「ちょっと失礼します」
するりと椎名さんの手が近づいた。
次の瞬間。
椎名さんの手が、額に触れた。