恋は手のひらの上で
病院に着いて少し経った頃。

「西野さーん、西野芽依さーん」

診察室のドアが開き、看護師さんに名前を呼ばれた。

「あ、はい」

立ち上がろうとして、少しふらつく。
その瞬間、隣から腕を軽く支えられた。

「ゆっくりで大丈夫ですよ」

いつもの落ち着いた声。
でも支える手は、ちゃんと力が入っている。
そのまま診察室の前まで歩いた。


看護師さんがカーテンを開ける。

「どうぞ。旦那さんも一緒に」

私は一歩、中に入る。

診察室の椅子に座ってから、ふと時間差で今の言葉を頭の中で繰り返す。


“旦那さんも一緒に”???


後ろに立っているであろう、椎名さんの顔を確認しようとした。
その前に目の前に座る内科医の先生が、問診票と私の顔を見比べながら尋ねてきた。


「今日はどうされましたか?」

「えっと、頭痛と…めまいがして」

答えながら、背後にいるはずの彼の存在が気になる。
たぶん、完全に付き添いの位置にいるはず。

先生が体温計の数字を見る。

「三十九度かぁ」

椎名さんの家で測った時はここまで高くなかった体温。
病院に来た時に再度測ったら、さらに上がっていた。

先生が私の方ではなく、ちらっと後ろにいる椎名さんを見る。

「旦那さん、昨日からですか?」


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