恋は手のひらの上で
「うちの会社にはいないね、あーゆー系」

紗英はおそらく椎名さんを思い出しているのだろう、しかめっ面だ。
甘いカクテルが入ったグラスをゆらゆら揺らしながら、考え込む。

「なんていうの、とんでもないイケメンではないんだけど、なんか見ちゃう感じ」

「ちょっとー。紗英ばっかずるいじゃん!私も近くで拝みたい!」

「もうやめて…」

盛り上がる二人を押さえる元気は、今日はない。


やっとジンジャーエールが届いて、三人でやっと乾杯をした。

「「芽依の全快にカンパーイ!」」

「…お騒がせしました」

私はやっと炭酸を口にする。
疲れが浮き上がって、ふと消えていく感覚。

その様子を、紗英がじっと見ていた。

「それで?」

「な、なにが」

私が聞き返すと、紗英はテーブルに肘をついたまま言った。

「椎名さんとは?あのあと」

やっぱりそこか。
麻耶も、グラスを口に運びながらこちらを見ている。

逃げられない空気。

「…送ってもらったよ」

「うん、それは知ってる」

紗英は酔っているわけではなさそうだ。
軽く飲んでるだけなので、わりといつものテンションでうなずく。

「だから、そのあとは?」

私はジンジャーエールのグラスを見つめた。
細かい泡が、静かに上がっていく。

「マンションまで、送ってくれて」

「それで?」

「…」

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