恋は手のひらの上で
紗英の“それで?”が止まらない。
どこかで見ていたのかと思うほどだ。

「オートロックで、入れなくて」

「「え?」」

紗英と麻耶の二人の声が、綺麗に重なった。

「私、たぶんその時もうほとんど意識なくて」

グラスを指でなぞりながら続ける。少しだけ息をついた。

「だから…その…、椎名さんの家に」


怖いほどの沈黙が訪れる。
この二人が黙り込むということは、情報処理が追いついていない証拠だ。

それから程なくして、紗英の

「はぁ!?」

という、思ったより大きな声が店内に響いた。
私は慌てて周りを見回す。

「ちょっと、声!」

「いやいやいや待って!家って!?どういうこと!?」

紗英はテーブルを叩きそうな勢いだ。
麻耶が静かに口を挟む。

「泊まったの?」

「うん」

またしても、沈黙。


破ったのは、麻耶だった。

「ドラマみたいな展開だね」

「ねえ!どんな部屋だった?ベッドで一緒に寝ちゃってた?起きてビックリ!みたいな?」

続けざまに紗英が興奮したように目を輝かせる。
そんな彼女を、まあまあ、と麻耶が背中をぽんぽん叩いていた。

「芽依はベッド?」

「うん」

「椎名さんは?」

「ソファ」

< 160 / 228 >

この作品をシェア

pagetop