恋は手のひらの上で
やがて、中央に座っていた役員がゆっくりと背もたれに体を預けた。

「……なるほど」

指先で資料を軽く叩く。
その音はさっきとは違う。攻撃的なものではなかった。

「保湿、低刺激、環境ストレス対策か…」

小さく繰り返す。

「三つを同時に成立させる処方、ということですか」

椎名さんはここでにっこりと役員に笑いかける。

「はい。その通りです。そのバランスが、この製品の価値だと考えています」


役員はしばらく資料を見つめていた。

それから、私の方へ視線を向ける。

「西野さん」

名前を呼ばれ、胸がどくんと鳴る。
恐怖と期待が入り交じって、ちょっと痛い。


< 177 / 228 >

この作品をシェア

pagetop