恋は手のひらの上で
『シリーズ化の話が出ています』

一瞬、言葉が出なかった。

「……えっ?」

予測していなかったわけじゃない。
それでも、聞き返した声が嘘みたいに静かだった。

『正式決定ではありませんけど、かなり前向きです』

胸の奥が、じわっと熱くなる。

「…本当ですか」

『はい』

椎名さんは落ち着いていたけれど、きっと電話の向こうで笑ってくれているはずだ。

『社内でも評価が高いですよ』

驚いている気持ちとほっとしている気持ちが、ぐるぐる回って感情が忙しい。

「嬉しいです」

この人の前でなら、素直に言えた。
椎名さんも、すぐに返してくる。

『俺も、嬉しいです』

ほんの少しだけ、声が柔らかい。

『また一緒に仕事できますね』

また、一緒に。
胸の奥で膨らんでいた期待は、むしろそれだった。
その気持ちも、ちゃんと認める。

「…はい」

スマホを耳にあてたまま、笑ってしまった。

「頑張ります」

『俺も、頑張ります』

椎名さんがそう返してくるのは少し珍しかったけれど、でも今の私には響くものがあった。

< 200 / 228 >

この作品をシェア

pagetop