恋は手のひらの上で
••┈┈┈┈••

椎名さんのマンションのエントランスは、夜でも明るい。
車から降りて着いた頃、まぶしくて目を細めた。

体調が悪い時に来ただけだったから、マンションの外観やエントランスなどは、正直なにも覚えていない。


エレベーターに乗って、並んで立つ。

さっきまで車の中で普通に話していたのに、急に言葉が少なくなる。

…なんだろう、この感じ。

久しぶりだから?
それとも、ここが椎名さんの家だから?


「前にここに来た時は、高熱でしたね」

ふと椎名さんの声が聞こえて、隣を見上げる。

「どうやって歩いたか、あまり覚えてないです」

「ですよね。朦朧としてたはず」


エレベーターが静かに止まる。

廊下を少し歩いて、椎名さんがドアの前で立ち止まった。
鍵が回る音がして、ドアが開く。


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