恋は手のひらの上で
椎名さんは静かにコーヒーを飲む。
その姿を見ながら、私はふと思った。

やっぱり、この人といるととてつもなく安心する。

「西野さん」

「はい?」

顔を上げると、椎名さんがこちらを見ていた。

さっきより、少しだけ近い距離。

「さっき車で話してたこと、ちょっと考えてて」

「え?」

「“忙しい”って、会えない時に使っていいのか」

彼が黙り込んだこの話題。
そんなに深刻に受け取らなくてもいいのに、と追い詰めてしまったような気がして慌てる。

「たわごとですよ、ただの」

「俺、ちゃんと会いたいと思ってたんですよ」

意外な言葉を言われて、コーヒーを飲んでいる途中で動きを止めてしまった。

「忙しくて疲れてる時に、連絡するのはどうなのか。西野さんのことだから、無理してでも来てくれる気がして」


< 215 / 228 >

この作品をシェア

pagetop