恋は手のひらの上で
気を取り直して、私は小さく息をついて言った。

「朝は別腹です」

榛人さんが少し黙る。
それから、ふっと笑った。

「そういうもんなのか」

そう言いながら、私の前にマグカップを置く。
そして、もう片方の手を差し出した。

「いくらでもどうぞ」


私はその手を取る。


きれいな手を、両手でなぞる。
指が長くて、少しだけ温かい。

何度見ても、何度触れても、私をドキドキさせる。


彼が伺うように私の顔を覗き込んできた。

「満足した?」

「……まだ」

そう言うと、彼はハハッと小さく笑った。

「欲張りだな」

「榛人さん。私、この手、絶対に離しませんから」

「うん。いいよ」

あっさりうなずく榛人さんが、楽しそうに笑う。
その顔を見て、私も笑ってしまった。

コーヒーの湯気が、静かに揺れる。

榛人さんの手は、まだ私の手を包んでいた。



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