恋は手のひらの上で
ほんとに、もう帰りたい。

二人の視線に耐えきれなくて、本音をこぼした。


「俺が、俺だけが、ただ、好きだっただけ」


思ったより切なくなったこの言葉に、麻耶は「そっか」とひと息ついた。

「今回は、ライバルがあまりにも強すぎたね」

「…だな」

それは間違いない。仕方ないけど、認める。



紗英がカクテルをぐいっと飲み干す。

「よし!次いこ!」

「次?次って?」

思わず眉を寄せて聞き返すと、紗英が胸を張る。

「高橋の人生!」

「でっかい話きたな」

麻耶が声を上げて笑った。

「恋はもういいの?」

俺は空になったジョッキの底を見ながら言った。

「あー、もう恋はいい。いらん」

「じゃあ何するの?この先の人生」

二人の視線が集まる。
待ちかねているその視線に、ふと考えた。

人生、とは。

「仕事して」

「うん」

「金貯めて」

「ほう」

「独身貴族になるわ」


シン、と沈黙。

ブハッと豪快に紗英が吹き出す。

「二十七で?」

「早すぎ」

二人が笑っているのを見て、俺もつられて笑った。



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