恋は手のひらの上で
会議に集中しなくては。
資料を無意識に引き寄せる。

椎名さんは相変わらず真剣な表情で口元に手を当てたまま、画面を凝視している。
きっと頭の中は数字が並んでいるのだろう。

『では、広告単価を固定した場合のROIはどうなりますか?粗利率とのバランスも見たいところですが』

私はスライドの表をパソコンで操作し、カーソルでなぞって見せた。

「初期広告費は最小限に抑え、粗利は想定内です。市場平均CVR3.0%で計算しても、上代三千円で成立します」

黒田さんが画面越しに眉をひそめる。
この人の険しい顔は、どうやらデフォルトのようだ。

初めて会った時から会議中はいつもこの顔で、会議が終わらないと和らがないということも、このリモート会議を重ねて理解した。

その黒田さんが口を開く。

『えっとー、西野さん。広告文言のテストはどの程度細分化しています?ターゲットセグメント別にABテストを行っていますか?』

少し緊張しながら資料を見て答える。

「はい。二十代後半、三十代前半で文章構成を整え、レビュー投稿までの動線も短縮しています。UX観点から心理的ハードルを下げる設計です」


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