恋は手のひらの上で
「安心してよ。サポートだって」

その声と腕の重み。
私の中では“頼もしい”なんて感情はない。
ただ、彼の好意に応えられないもどかしさだけが胸に残る。

「……うん」
と、小さく答える。

声も心もぎこちない。
高橋はいつも通りに笑ってるけれど、その目にはほんの少しだけ真剣さが混ざっているのが分かる。


私は意識して前を見る。
視線を外す。

隣にいるのは高橋、頭の中でちらつくのは、さっきまでの画面越しの椎名さんの真剣な顔。


どうして、こんなに複雑なんだろう。

心の中でそう繰り返す。
彼の気持ちはなんとなく知っている。

どこかで区切りをつけなくてはいけないとも思っている。


「じゃあ、次の会議、よろしくな」

軽く肩を叩いて、少し離れる高橋。

その残像だけが胸の奥に残る。


私は深呼吸をひとつ。
複雑な感情を抱えたまま、机の上に手を置いた。




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