恋は手のひらの上で
決定事項を確認し、私と高橋が立ち上がる。
椅子の脚が床を擦る音が、やけに鮮明だ。
朝倉課長が椎名さんを呼び止め、タブレットを見せてなにかを確認している。
二人を残して、高橋と一緒にいったん廊下へ出た。
廊下に出てすぐ、隣に立つ高橋が、ぽつりと言った。
「西野」
「ん?」
「シリーズ展開、初耳なんだけど」
「あ…うん、ごめん」
言ってなかった。高橋だけじゃなく、朝倉課長にも。
誰にも言ってなかった、私だけの密かな展望。
この会議で椎名さんに引き出されてしまった。
「いま思いついたわけじゃないだろ?」
なにかを見透かしたような高橋の物言いに、私は素直にうなずく。
「…うん」
高橋は半分呆れたように笑った。
でも、その目は少しだけ真面目だ。
「まったく…西野ってさ」
「なに」
「あんな顔、するんだな」
一瞬、意味が分からなくて見つめ返す。
「え、どういう顔?」
「未来の話してる顔だよ」
彼は手に持っていた書類を抱え直して、私から目を逸らした。
「椎名さんと、同じ方向見てる顔」
突然出てきた彼の名前に、鼓動が跳ねる。
言い返せなくて、高橋は鼻で笑った。
「そういうのも、ぜんぶ自覚ないのかよ」
と小さくつぶやく。
「俺、今日初めて見たよ。西野のそういう顔」
「…」
椅子の脚が床を擦る音が、やけに鮮明だ。
朝倉課長が椎名さんを呼び止め、タブレットを見せてなにかを確認している。
二人を残して、高橋と一緒にいったん廊下へ出た。
廊下に出てすぐ、隣に立つ高橋が、ぽつりと言った。
「西野」
「ん?」
「シリーズ展開、初耳なんだけど」
「あ…うん、ごめん」
言ってなかった。高橋だけじゃなく、朝倉課長にも。
誰にも言ってなかった、私だけの密かな展望。
この会議で椎名さんに引き出されてしまった。
「いま思いついたわけじゃないだろ?」
なにかを見透かしたような高橋の物言いに、私は素直にうなずく。
「…うん」
高橋は半分呆れたように笑った。
でも、その目は少しだけ真面目だ。
「まったく…西野ってさ」
「なに」
「あんな顔、するんだな」
一瞬、意味が分からなくて見つめ返す。
「え、どういう顔?」
「未来の話してる顔だよ」
彼は手に持っていた書類を抱え直して、私から目を逸らした。
「椎名さんと、同じ方向見てる顔」
突然出てきた彼の名前に、鼓動が跳ねる。
言い返せなくて、高橋は鼻で笑った。
「そういうのも、ぜんぶ自覚ないのかよ」
と小さくつぶやく。
「俺、今日初めて見たよ。西野のそういう顔」
「…」