恋は手のひらの上で
不意に、椎名さんが私の足元に視線が落ちる。

「今日、会った時から思ってました。珍しくローヒールなんですね」

「あ、今日は社内だったので。これが本来の私です」

「“背伸びしてない西野さん”?」

少し前の私たちでは考えられないような、なんてことない会話。
はい、とはにかむと、彼はなんだか嬉しそうだった。

「思っていたより小柄だ」

さらりと言われて、心臓が一拍遅れる。

「オンラインだと、分からないですね」

「そうですよね…直接会ってないから」


ひゅっと風が吹く。
ほぼ同時に、何かが頬をかすめた。

「あ」

椎名さんの前髪に、小さな葉が引っかかっていた。
同時に、彼の視線がこちらの頭上に止まる。

「「ついてます」」

二人で、同時に手を伸ばした。

彼の指が、私の髪に触れた。
ほんの一瞬。

出会った時から好きな手だと思っていたその手が、私の髪に絡まる葉を取った。
息が詰まるのを悟られないよう、距離が近いまま、今度は私が彼の葉を取ろうと背伸びする。

─────まったく届かない。

「…すみません」

私の身長が足りない。
それがはっきりして、顔が熱くなる。


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