恋は手のひらの上で
ずるいです
金曜の夜。
いつもの会社の近くの、お決まりのバルへ足を運んでいた。
ここ最近は、毎回遅刻して参加の流れになってしまっている。残業が続く日々だ。
足元はローヒールだから、足取りは少し軽い。
すでに飲んでいた紗英と麻耶は、私が来るとすぐにワインを注文してくれて、改めて乾杯した。
「芽依、おつかれー!」
グラスを合わせる音も、私だけ控えめだった。
二人は何杯目かの乾杯らしく、力加減がもうできていない。
早速、紗英がにやりと笑う。
「ねえ、芽依。見たよ。東央ヘルスケアの椎名さん」
ぎくっとして肩が揺れた。
でも、気づかないふりで首をかしげる。
「え? なにが?」
「なにが、じゃないよ。顔、普通って言ってたよね?」
麻耶もすぐに乗っかる。
「あれのどこが普通なの。普通に目立つでしょ」
はっきり言い切られて、私は額を押さえた。
まだワインをひと口しか飲んでいないのに、頭が痛い。
…やっぱり、そうなのか。
「…そうなんだ」
曖昧に返すと、二人はそろって呆れた顔をした。
「高身長で、清潔感あって、しかもちゃんと雰囲気あるじゃん」
「女子社員ざわついてたの、気づかなかった?」
「…なんとなくは分かったけど。そこまでだとは思ってなくて」
「ねね、次はいつ来るの?また見たーい」
止まらない勢いでまくし立ててくる二人に圧倒されてしまう。