恋は手のひらの上で
だだっ広い駐車場に到着し、車から降りると見覚えのある黒い車から椎名さんが降りてくるのが見えた。

彼も長時間の運転で疲れたのか、降りてすぐに肩をぐるぐる回している。
そして後部座席のハンガーにかけていたらしいジャケットを、素早く羽織った。
動作ひとつひとつが、きれい。


隣を見ると、大きなあくびをする高橋。
ジャケットを着たまま運転していたから、ところどころに伸ばしても消えてくれなそうなシワが刻まれている。

「高橋、運転、ありがとう」

二時間もの間、ずっと運転してくれていたのだ。
労うと、彼は自慢げに笑った。


「快適だっただろ?俺の隣」

「運転、でしょ」

私は彼の反応を聞かないように、待たずして椎名さんへ「お疲れ様です」と声をかけた。

不服そうな高橋が後ろをついてくる。

「遠くまでお越しいただき、ありがとうございます」

私が駆け寄ると、椎名さんは明るい日差しに目を細めながら微笑んだ。

「いえ、運転は好きなので」

太陽の光が彼の髪の毛や瞳を、さらにワントーン明るくする。
透けるようなこの明るさは、やはりひと際目を引くようだった。

後ろにいたはずの高橋が、ここは自分の得意分野であると言いたげに一歩前へ出る。

「椎名さん。ご案内します。こちらへどうぞ」


まるで私と椎名さんの間を遮るみたいに、高橋は体を入れて建物へ促すのだった。





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