身代わりの結婚は本当の愛のために
 今回の仕事は、駅の柱広告とビジョン広告だ。初夏に発売予定の大手化粧品メーカーの新ブランドを大きく展開する広告で、今回は数社とのコンペになる。中にはかなり大手の会社も参入予定と聞いているから、念入りに下調べはしたい。

 広告を打つ場所にも、年齢層や服装の傾向など、細かく分析しないと……。
 こういう業界なのに、と言われそうだが、私は頭を整理するときに紙とペンを使う。

 つい足を止めて、その場で人を観察していた。
ふと目を向けると、視線の先に立っていたのは、整った顔立ちの男性だった。身長は一八〇センチはあるだろうか。どこかで見たような気もする――? ただ、その存在感に、私は無意識のうちにカメラを構え、シャッターを切っていた。なにしてる人だろ? モデルとか芸能人でもおかしくないかもしれない。またもや職業病のように人を分析していると、不意に声がした。

「ねえ、君」
その声にハッとして、私は顔を上げながら口を開く。

「なんですか?」
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