身代わりの結婚は本当の愛のために
「いや、だから……そんな先輩から〝結婚〟って聞こえたから驚いたんですよ」
 まあ、それはそうだろう。

 それ以上追及する気にもなれず、私はちらりと彼女を見た後、少し強く降ってきた雪に手を伸ばした。
「斎藤ちゃん。今日はいいよ。電車、止まるかもしれないし。あとは私がやっておくから、帰っていいよ」
現場の下見として一緒に考えたいと連れてきたのだが、休日にこれ以上付き合わせるのも酷だろう。

「いいんですか? この後彼と会う予定だったんです」
 にっこりと笑った斎藤ちゃんに、私はひらひらと手を振り返し、バッグから折り畳み傘を取り出す。
 駅の方へ小走りで向かっていく彼女のうしろ姿を見送ってから、私は小さく息をついた。

「二十四って、私より年下なのに、彼氏がいるなんて生意気」
 そんなことを毒づいてみたところで、男っ気がない自分が悪いだけなのだ。

「えっと、このビルか……」
 都心の大きなビルの電光掲示板。そこには、今は有名なアイドルがにっこりと笑っている。
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