身代わりの結婚は本当の愛のために
 ひとり暮らしのワンルームのマンションには自分しかいないのに、つい声が漏れていた。それくらい、今の私には憂鬱なことだった。着ていけそうな服なんて、あっただろうか……。

 大学卒業後、お金が少し貯まってから家を出たが、もちろん援助などはなかった。だからこそ、とても小さな部屋ではあるが、ここは私のお城だ。

 広くない部屋のクローゼットを開けると、黒やネイビーなど、暗い色の服ばかりが目に入る。商談などに行くときに着るスーツはもちろんあるが、ワンピースやフォーマルな服は、結婚式用しかない。
 しばらくクローゼットを眺めていたが、買いに行く気にもなれなかったので、スーツを着ていくことに決めた。華やかにしていったらしていったで、きっと詩乃はいい顔をしないだろう。

 そう思うと、私はそのことを考えたくなくなって、クローゼットを閉めた。それが昨日のこと――。

< 17 / 35 >

この作品をシェア

pagetop