身代わりの結婚は本当の愛のために
「先輩みたいに、もこもこの服を着たらモテないんですよ。私はおしゃれ優先なんで」
こうして軽口を叩くことは多いけれど、不思議と彼女からはいつも、言葉の端々に育ちのよさや丁寧さのようなものを感じる。

 中性的なきれいな顔立ちに、どこか神秘的な色をした瞳。その外見のせいもあってか、男性に間違えられることも多いようだ。性格もサバサバしていて、本音を見せないところも多いが、私にとってはかわいい後輩だ。
「ええ? このダウン、あったかいんだけどな」
「でしょうね。雪だるまみたいですもん」

 そう言われ、私は思わず自分の全身に視線を落とした。
 今日は休日出勤ということもあって、いつもよりたしかにカジュアルだ。

 雪が降ると天気予報で見たこともあって、スウェット生地のブラックのパンツにローヒールのブーツ。上は赤のタートルネックに、お気に入りのグレーのダウンコート。

 それでも今日は、髪を下ろしているし――自分としては、お出かけスタイルのつもりなのだが……。
「おしゃれより、寒くない方がいいの」
< 7 / 35 >

この作品をシェア

pagetop