ゴシップ記者令嬢なので婚約破棄の真実を暴いたら侯爵令息さまに付きまとわれています。邪魔です。
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「どうして、あんな嘘を」

 ルーシーは小声で抗議した。
 ここはなんとゴールドウィン侯爵家の馬車の中。呼び出しのせいで帰りが遅くなったので送る、とアーサーに無理やり乗せられたのだ。
 落ち着かないのは慣れない豪奢な造りのせいか、密室にアーサーと二人なせいか。美形な侯爵子息は余裕の顔でうそぶく。 

「……まあ、面白いからかな」
「最低です」

 あの言い方だと、ルーシーから寄せられる好意をアーサーも受け入れていることになってしまう。黄色い悲鳴はそのせいだ。
 まったく、明日からルーシーに向けられる視線をどうすればいいのか。取材を邪魔する気か。

「君は言ったね。事実は人を助けると。だけど嘘だって同じだ」
「そりゃまあ、新聞部は助かるかもしれませんけど」

 アーサーから出た熱愛宣言もどきで毒気を抜かれた教師は、処分保留のままルーシーを帰してくれた。ルーシーとしてもありがたいことはありがたい。だが納得できずムスッとしているルーシーに、アーサーはいたずらな目を向けた。

「――で、話を戻すが」
「え、どこに戻すんです」

 キョトンとするルーシーを見て、アーサーは嬉しそうだ。ここまでだいたい会話の主導権を握られてきたから。

「洗脳、てところに戻ってくれ。殿下の行動がおかしい理由についてだ」
「ああ」

 呼び出し直前の話だ。
 ローランド王子は何故クララの話を信じ、彼女に都合のいい行動をするのか。このままいけばキャサリンとの婚約を破棄しクララとの仲を深めてしまうかもしれない。

「私もいつもの殿下は思慮深い人だと思います。だから今は――クララさんに操られてるみたいに見えて」
「うーむ。だが人を操るなんて可能だろうか。クララは癒しの聖力がとても強いが……心にまでそれが及んでいるとか?」

 アーサーのその推理に、ルーシーは膝を打った。

「心への癒し……それ、いいセンです!」
「そ、そうかな」
「はい……てことは、他に例がないかどうかクララさん周辺に探りを入れてみようっと」

 褒められてまんざらでもなさそうなアーサーを放っておき、ルーシーは取材計画を練り始めた。


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