ゴシップ記者令嬢なので婚約破棄の真実を暴いたら侯爵令息さまに付きまとわれています。邪魔です。
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「皆さんは、人が死んでいくのを見たことありますか」

 泣きはらした顔で語りだしたクララが、まず口にしたのはそんな問いだった。

「わたし、聖会に所属してすぐ国境に連れていかれたんです。聖なる結界の見学に」

 それは、ただの見学のはずだった。しかしちょうどそこに魔物が襲来し、護衛の王国軍と戦端が開かれてしまったのだ。
 初心者のクララが矢面に立たされることはなかった。だが前線で癒しの加護をほどこして回るベテランたちや傷ついて倒れる兵士たちの姿は、少女にとって大きな衝撃だ。
 そして――不意打ちの初撃を食らって後ろに運ばれていた聖人が目の前で息を引き取ったことで絶望したのだという。

「みんなで癒しを重ねました。でもダメだった。聖女として働いていたら、わたしもいつかこうなるのだと思ったら……怖くて」

 学園に入って、そこにいる者たちの優雅さにも腹が立った。この人たちが魔物と対峙することなど一生ないのだ。

「ずるいなって。聖力があるばっかりに、わたしは魔物の前に立たされる。なら聖力なんていらない。貧民街に暮らすままでいたかった……」

 クララが実家を恋しく思っているのは事実だったらしい。理由がちょっとルーシーにも予想できないものだったが。
 ならば何故、ローランド王子に近づいたのか。

「殿下の大切な人になれば……危ないことはやらされないだろうと」

 別に妃になりたいとは思わなかった。王子ともなれば、愛人の一人や二人いてもいいんじゃないか。そういう立場になれたらと考えたのだ。

「ローランドさまは、そんな不誠実な方ではありません!」

 キャサリンは泣きそうになりながらクララをさとした。
 この優しいご令嬢はとっくにクララに同情している。クララがしたことはよくないが、突然置かれた境遇に怯えてしまうのは理解できた。

「わたくしたちが安全な場所にいるというのは、そうかもしれません。でもねクララさん、貴族の男には戦う義務があるわ。そして貴族の女は、生き方を選ぶことができない。それぞれの立場で誰もが戦っているの。それを知ってちょうだい」
「キャサリンさま……」
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