ゴシップ記者令嬢なので婚約破棄の真実を暴いたら侯爵令息さまに付きまとわれています。邪魔です。
気高くて教養もそなえた公爵令嬢の言葉はクララに届いたようだ。唇をかんでうなだれてしまう。
罪を認めたクララを見つめ、ルーシーは静かに声をかけた。
「死にたくないって思うのは悪いことじゃないです」
クララがゆっくり顔を上げる。そこにいるのは聖女でもなんでもない、かわいそうな少女。
「皆が弱い部分を持っている。クララさんもそういうのに共感して引っ張られたのかもしれないですね」
「そう……思ってくれますか」
「ええ。でも今回の件はとにかく雑でした。やるならとことんやらなきゃダメです」
「やめろルーシー」
アーサーが渋い顔でコツンと頭を小突いた。ルーシーはその手を振り払う。
「クララさん、せっかくの才能なんだから活かせばいいんですよ。ただの聖女にしておくのはもったいない」
「なに?」
ルーシーが言い出した先が読めなくて、全員が怪訝な顔をした。ルーシーは力強く言い切る。
「クララさんも官僚を目指しましょう!」
「かん……りょう……わたしが?」
「そう。その魅了というか共感というか、ぶっちゃけ洗脳でもいいんですけど――交渉ごとに最強だと思うんですよね」
「その手があったか!」
叫んだのはアーサーだ。納得して笑いが止まらなくなる。
たとえば利害の対立する隣国。外交団の一員としてクララが加わっていれば、初っぱなの握手の段階から相手にこちらの要求を強く刷り込むことができるのだ。
「なんという……!」
ローランド王子もほとほと感心したという風情になった。まだぼう然としているクララ本人に、ルーシーはニヤリと笑いかける。
「私も宮廷で活躍するのを狙ってるんで。どう? 一緒にお勤めしましょうよ」
「わたしが……」
「そうしたらたぶん、前線には行かないですむでしょう? 自分の望む生き方は、自分の手で勝ち取らなきゃ!」
どこまでも前向きなルーシーの心の輝きにあてられて、クララはまぶしそうに目を細めた。