ゴシップ記者令嬢なので婚約破棄の真実を暴いたら侯爵令息さまに付きまとわれています。邪魔です。
誰に聞かせる言葉でもなかったが、ルーシーが食いつく。
「何がですか?」
「まだいたのか君は」
「そりゃいますよ。で、何が妙なんです?」
「メモを取り出すんじゃない! いや……君もローランド殿下のことを取材していたんだよな? ならば普段の殿下とは様子が違うと感じなかったか」
「わたくしも、そう思います」
泣き声で訴えたのはキャサリンだ。
「ローランドさまは、いつも人の話に耳をかたむけ熟考なさいます。わたくしに言い訳の機会すらろくに与えず決めつけるだなんて、ローランドさまらしくありません」
「いや……それはこのルーシーが邪魔をしたからかもしれないが」
「私ですかぁ!? アーサーさん、理不尽な言いがかりはよして下さい。むしろ客観的な証拠を提示しようとしたのに殿下が逃げたんですってば」
一国の王子を逃げたとそしってはばからないルーシーに衝撃を受け、アーサーはよろめいた。なんなんだ、この新聞部員は。
「君……うっかりすると不敬罪になりそうだな。立場が危なくなるとか考えないのか」
「でも、真実が歪められているんですよ。追及しないと」
「正義感からなのか?」
「違います」
ルーシーはキラキラした瞳で言い切った。
「記事が売れます!」
「最低だな」
アーサーは鼻にしわを寄せる。それでもイケメンなのはさすがだった。
軽蔑のまなざしを受けつつルーシーは悪びれない。
「でも、事実は人を助けますから」
物怖じせず事件に切り込んでいくルーシーは自信ありげだ。
悠然とした態度のゴシップ記者をアーサーはしげしげと見つめる。そして――とにかく変な女だ、と判断した。