ゴシップ記者令嬢なので婚約破棄の真実を暴いたら侯爵令息さまに付きまとわれています。邪魔です。
一、大切なハンカチが紛失。
二、背後から噴水へ突き落された。
三、キャサリンから呼び出され、ローランド王子との関係を詰問された。
「三番目が濡れぎぬなのは明白です。その時間、キャサリンさんは刺繍教室にいました」
「きゃああっ、ルーシー!」
キャサリンが顔を赤くして悲鳴をあげる。アーサーは困惑気味だ。
「刺繍……なんだって?」
「裁縫の達人が個別指導する教室です。キャサリンさんはこの何週間か、金曜日の夕方にそこへ通っています」
「……わたくし、刺繍が得意ではなくて」
キャサリンはうつむいて白状した。
「ローランドさまの誕生日が間もなくですの。わたくしの手による品をいつも身に着けていただけたら嬉しいと思って、ネクタイの裏側に刺繍を……」
つまりローランドへの愛ゆえのお忍び手芸教室。上手にできるかどうかもわからないため、絶対に内緒で通うと決めていたそうだ。
それにしても人目につかないネクタイの裏側へ刺繍とは、控えめなことだ。
「だって恥ずかしいですもの……」
「いやいや、本気でローランド殿下に恋しちゃってるんでしょ。仲良きことは美しきかな! めちゃくちゃ好感度高いですよ、これいい記事になるわぁ」
「だからメモを取るな! だいたい君はなんでキャサリン嬢の行動を把握しているんだ!」
取材メモを手から叩き落したアーサーに、ルーシーはムッと真顔を向ける。
「新聞部ですから」
「いや、もうストーカーだろう」
「正当な取材活動です。アッシュボーン公爵家令嬢にしてローランド王子の婚約者ともなれば、ほぼ公人のような立場ですので」
しれっと主張して手帳を拾うとルーシーは話を戻した。
「クララさんの話の裏付けは小間使いの言葉だそうですが、その小間使いは利害関係者にもなり得ますし証言効力が弱いですね。具体的には、金で買われている可能性が」
「本当に君の思考はえぐいな」