あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~
「ありがとうございます。今ので、嫌なことが全部吹っ飛びました」
「全部って?」

 うっかり余計な発言をしてしまったと思ったが、あとの祭りだった。とはいえ、隠す必要もないのだけれど。

「ひったくりに遭う前、あのカフェで恋人に振られたんです」

 康史が出世のために私との別れを選んだことを、順を追って彼に話して聞かせた。
 ほかの女性と天秤にかけられて捨てられたのだから、よく考えたら恥ずかしい話なのに、なぜか瀬良さんに対してはそういう感情が湧いてこない。

「すみません。こんな情けない話をして……」
「情けなくなんかない」

 間髪を容れずに、真剣な声音ではっきりと否定してくれたのがうれしくて、目頭がじんと熱くなった。

「結婚の価値観は人それぞれだけど、付き合っている恋人を傷つけてまでやることじゃないだろう。勝手すぎる」

 自分にとって損か得か、結婚は本来、そんなふうに打算的に相手を決めるものではない。
 この人と一生一緒にいたい、幸せに生きていきたいという気持ちのほうが断然大事だと私も思う。

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