最低で大嫌いなあなた、結婚してください
 一日一善を心がけている鞠花は、自分にご褒美を与える口実を作る。

 最寄りのコンビニに入った鞠花は、まっすぐ衣類が置いてあるコーナーに向かう。

(Mサイズでいいのかな? 男性のサイズって分からないな。でも結構鍛えていたから、Lサイズ?)

 分からないながらも、大は小を兼ねるという事でLサイズを買った。

 サッと買い物を終えた鞠花は、ぼんやりと修吾を思い出す。

(格好いい人だな。芸能人みたい。まぁ、恋人か奥さんいるんだろうけど。きちんとお世話して、後腐れなく送り出そう)

 彼を助けたのは六本木の街中だったが、早朝に歩いていたという事は朝帰りなのか、近所に自宅があるかのどちらかと思っていいだろう。

(事情を聞こうと思っても、ああいう人は嫌がりそう。〝恩人〟から〝鬱陶しい女〟に降格しないように気を付けないと)

 鞠花はセミの鳴き声を浴びるように聞きながら、急いで帰路に着いた。



**



 部屋に戻ると、修吾はペロリと朝食を平らげ終えていた。

「修吾さん、コンビニTシャツですが、どうぞ」

「ありがとうございます。幾らしましたか? 払います」

「いえ、いいんです。それより、早く着ていただけると助かります。……その、目の毒なので」

 冗談めかして言うと、修吾は「あ、失礼」と背中を向け、パッケージからTシャツを出して白Tを着る。

「一緒に歯ブラシも買ってきましたので、もし良かったらどうぞ」

「何から何まですみません」

 Tシャツを着た修吾は改めてこちらを向く。

 それを見た鞠花は、「普通の白Tを着た姿でも、格好いい人は格好いいのだな」と妙に感心していた。

 そして時間を確認し、彼女も食事を始める。

「すみません。冷めてしまいましたね」

「いいえ、お気にせず」

 食事をしていると、修吾の視線を感じる。

(……た、食べづらい……)

 思いの外、食べているところを人に見られるのは恥ずかしい。

 箸の持ち方や食事マナーについては問題ないはずだが、それでもおかしな所がないか、つい意識してしまった。

 やがて食事を終えた鞠花は、歯磨きをして脱衣所で着替え、修吾と一緒に家を出る事となった。

 その時、彼はおずおずと話し掛けてきた。

「良かったら今度、お礼に食事でもどうですか?」
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