最低で大嫌いなあなた、結婚してください

贈り物

 修吾を助けたのは日曜日の早朝だった。

 鞠花はいつもと変わらない日々を送っていくが、その中に〝修吾からの連絡〟という異分子が混じり始めた。

 二年間彼氏がいなかったため、修吾から連絡があると、やけに浮き足だってしまう自分がいる。

(彼はただ恩返しをしたいだけなんだから、調子に乗らないようにしないと)

 そう思っていた水曜日の夕方、マンションに来客があった。

 前日に修吾から予定を聞かれ、夜勤明けで午後には起きると伝えたので、彼かと思ったのだが――。

「だ、誰ですか?」

 目を瞬かせた先には、知らない男女が数人いる。

 とてもお洒落で洗練された女性に、夏場なのにきちんとスーツを着た男性。

 全員手に荷物を持っていて、何が起こったのかよく分からない。

「修吾さまよりご依頼がありまして、金曜日の準備のためにお荷物をお届けに上がりました」

 そう言って差しだされた名刺は、大手百貨店の外商部のものだった。

「ど……どうも。ご苦労様です……」

 お洒落な宅配の一種なのかと思っていると、女性が「少し上がらせていただいても構いませんか?」と尋ねてくる。

「どういうご用件でしょうか?」

 修吾の……と言われて安堵したものの、業者を家の中に入れて押し売りをされては困る。

「金曜日に修吾さまとお食事をされるに当たって、西城さまが気に入る服や靴などを確認してほしいというご依頼です。もちろん、西城さまが買い取る必要はありません。料金は修吾さまがお支払いで、西城さまには『気に入った物を身につけて、金曜日に来てほしい』との事です」

「えぇ……?」

 鞠花は「どこのシンデレラだ」と心で突っ込みながら、一応彼女たちを家に入れる。

「狭くてすみません」

「いいえ、とんでもございません」

 女性は手にしていたガーメントカバーを開き、中から高級ブランドのロゴが入ったハンガーに掛かった、数着のワンピースを取り出す。

 他の者は箱から靴、バッグを出している。

「えっ? えぇえ……」

 ブランドに疎い鞠花でも知っている、超有名ブランドの商品が自分の家の中にあり、ギャップで頭がクラクラする。

 あまりに非現実的な光景に、鞠花は嬉しいと思うより引いた気持ちでそれらを眺めていた。

 だがハッと我に返り、外商たちを止めようとする。

「こんな高価な物、受け取れません」

「ですが、もう修吾さまが買い取りされたあとですので……」

「うっ……。こ、これ、もう買ったあとなんですか?」

 気に入った物を選び、それをあとから修吾が購入するのだと思っていたが、ここにある物全部、会計済みとは思っていなかった。

(……胃が痛い……)

 しかし、すでに精算されているなら仕方がない。

 鞠花もデパコスなら幾つか持っているが、毎回返品はなしと言われている。

 だからここにあるブランド品も、返品は効かないのだろう。

 鞠花は渋々ワンピースや靴を試着する。

 足のサイズを知られているのは解せないが、玄関で靴を見られたのだろうか。

 さらには女性スタッフに体のサイズまで測られ、明日には下着のフィッティングもあると聞かされた。



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