最低で大嫌いなあなた、結婚してください
 待ち合わせ場所は、徒歩ですぐの麻布十番駅だ。

 鞠花は修吾から送られたワンピースの中から、自分の趣味に一番合う物を選んだ。

 身に纏っているのはネイビー地にカラフルな花、葉柄が描かれたワンピースで、体の中心線に白いラインがあり、裾も同じ色でパイピングされている物だ。

 紺のリボンでウエストマークする事で、スッキリ見える。

 美容師がするような複雑な髪型にはできないので、動画を見て簡単なまとめ髪にし、パールのヘアクリップをつけた。

 普段、仕事ではナースウォッチと呼ばれる、懐中時計に似た物を使っていて、プライベートではスマートウォッチを使う事が多い。

 しかし今日のデートでは、ピンクプラチナの華奢な腕時計をつけた。

 靴はベージュのパンプスだが、あまりヒールが高いと歩く事もままならないと配慮してくれたのか、五センチヒールなので何とかなる。

 バッグは金色のチェーンがついた赤いショルダーバッグだ。

 普段、鞠花は動きやすさ重視でTシャツにデニムなど、シンプルな格好が多い。

 たまにスカートを穿く時も、特にお洒落にこだわりを見せずファストファッションで気に入った物を買う程度だ。

 デパコスのリップやファンデーションは、同僚や先輩から『これぐらいの年齢になったら、労働の対価としていい物使わないとね』と言われて、流されるように買ったが、正直、ドラッグストアで買う物と違いが分からないでいる。

 しかしそれを口にすれば〝違いの分からない女〟扱いされてしまうので、黙っていた。

 両親がいない鞠花は、稼いだお金はなるべく貯金するようにしている。

 なので、いざ〝全身ブランド女〟になると、非常に緊張した。

(変じゃないかな……)

 転ばないようにいつもよりゆっくりに歩く鞠花を、通り過ぎる人――特に男性が見ている……気がする。

 実際、第三者の見る彼女は、品のいい美人に映っていた。

 だが鞠花は自分の魅力を分かっておらず、周囲の人の反応に「やっぱり変なのかも」と不安を抱きながら駅に向かっていた。

 マンションを出て一の橋まで行った時、横断歩道の向こうに修吾の姿が見えた。

 彼は鞠花の姿に気づき、大きく手を振っている。
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