最低で大嫌いなあなた、結婚してください
(スーツ着てる……。やっぱりちゃんとしたレストランに行くのかな。……っていうか、格好いい……)

 初めて会った時、修吾はどこかのブランド物らしいTシャツにデニム姿だった。

 それが今日はソフトツーブロックの髪をさりげなくセットし、長身で鍛えた体にあつらえたチャコールグレーのスーツを着ている。

 遠目からもスーツはとても形が良く、全体的にスリムに見えながらも上半身の逆三角形を際立たせ、格好いい。

「お、お待たせしました!」

 信号が青になって小走りに横断歩道を渡ると、ブルーグレーのネクタイを締めた彼は甘く微笑んだ。

「丁度いま来たところです。すぐ近くのパーキングに車を停めていますから、行きましょう」

「は、はい」

 先日の彼とはまったく印象が違い、別次元の存在に思えた鞠花は緊張して歩く。

「あの、沢山の贈り物をありがとうございます。こんなに高価な物……。そのうち、代金をお返ししますから」

 隣を歩く修吾を見上げると、改めて彼が長身である事が分かる。

 彼は鞠花を見下ろしてクスッと笑った。

「命の恩人ですから、食事をご馳走する以外にも多少の事はさせてください。普段使いに向いていないかもしれないので、必要なくなったら自由に処分して構いません」

「そ、そんな勿体ない事しません!」

 とんでもない、と全力で首を横に振ったので、足元が少しふらついた。

 ココ、とヒールの足音が乱れたからか、とっさに修吾が手を伸ばして鞠花の腕を掴んだ。

「大丈夫ですか?」

 見るも美麗な修吾に顔を覗き込まれ、鞠花は羞恥で俯く。

「……す、すみません……」
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