最低で大嫌いなあなた、結婚してください
 やがて修吾が笑顔を見せ「行き違いがあったようですね」と、再び話し始める。

「今日の食事は、確かに恩人の鞠花さんにお礼をしたくて招待しました。でもその他に、俺はあなた個人に興味を抱いています。勇気のある女性だと思うし、とても魅力的に感じています。だから次も、その次も会って食事をして、色んな話をしてお互いを知りたい。……駄目ですか? 彼氏がいる?」

 一人の女性として見ていると言われ、鞠花の鼓動がドキッと跳ね上がる。

「か、彼氏は……い、いません……。ここ二年、仕事ばっかりでフリーです」

 声を震わせて応えた鞠花に、修吾は惚れ惚れするような笑みを浮かべた。

「じゃあ、俺が彼氏候補として手を挙げてもいい?」

 少しおどけて片手を挙げた彼に、鞠花は真っ赤になりながら小さく頷くのだった。





 やがて二人は二階に案内され、白いテーブルクロスの掛かった丸テーブルにつく。

 テーブルの上にはすでにプレートやナイフ、フォークなどがセットされ、一輪挿しには花が飾られてあった。

 メインフロアは一階らしいが、二階のこの部屋にあるテーブルは三組のみだった。

 壁には絵画が飾られ、窓にはドレープの掛かったベージュのカーテンが下がっている。

 ギャルソンが修吾の予約したメニューを確認し、さらにアレルギー等がないか再度尋ねてくる。

 そのあと飲み物のオーダーになり、二人にドリンクメニューが渡された。

(うわっ……!)

 飲み物はすべて千円以上で、鞠花はその値段にビビッてしまう。

 けれどメニューを見ていると、ソフトドリンクにしても赤葡萄ジュース、ブルーベリーのジュースやラズベリーのジュースなど、普通ならまずないラインナップがある。

 加えて鞠花はベリー系の果物がとても好きなので、気になってしまった。

「鞠花さんは普段酒を飲むんですか?」

「あ、そう……ですね。たまにコンビニでビールとかチューハイを買う事はありますが、そんなに沢山は飲まないんです。グデグデになるまで酔っ払うと危険が増すと知っているので、理性が働いてそれほど酔えないというか……。〝美味しいお酒を飲んだ〟っていう事実さえあれば、満足できるタイプなのかもれません」

「そうなんですか。鞠花さんらしいですね」

 微笑んで言った修吾の言葉に、鞠花は救われる思いになった。
< 23 / 61 >

この作品をシェア

pagetop