最低で大嫌いなあなた、結婚してください
 やがて飲み物が運ばれ、二人は赤葡萄ジュースとシャンパンで乾杯した。

 赤葡萄ジュースは値段の割に少ししか入っていなかったけれど、とても濃厚で美味しく、高級な飲み物だとすぐに分かった。

 そして食事前の一口のお楽しみ――、アミューズが運ばれてきた。

 白い皿の上に載っているのは、シュー生地に鶏肉のムースを載せた物、ベーコンを載せたタルト、串に刺さったひよこ豆のコロッケだ。

「いただきます」

 それらはフィンガーフードと言って指で摘まんで食べていいらしく、鞠花は少し緊張してアミューズを口に入れる。

「ん、美味しい……」

 まだ温かいミニシューに顔をほころばせると、向かいで修吾が「良かったです」と微笑んだ。

 その後、前菜が出されたが、鞠花は見るも綺麗な料理を、失敗しないように丁寧に食べるのに精一杯で、あまり修吾との会話を楽しめていない。

 生まれて初めてキャビアを缶のまま食べたが、思っていた以上に美味しくて感動してしまった。

 そのあとは新鮮な帆立をサラダ仕立てにした前菜、穴子のマトロート――煮込み、平目の皮をパリッと焼き、身はふっくらジューシーなクリーム仕立て、赤ワインソースを使った夏鹿肉のローストが出た。

 どれもお上品な量だが、コース料理は出すタイミングも計算されているので、メインを食べ終える頃にはすっかり満腹になっていた。

 肉料理が終わったあと、デザートが出されるかと思いきや、ワゴンに載ったチーズが出される。

 ギャルソンがチーズの種類を説明してくれ、「どれになさいますか?」と尋ねてくる。

「鞠花さんはチーズ、お好きですか?」

「はい。……と言ってもお恥ずかしい事に、裂けるチーズとかなんですが……」

「じゃあ、物は試しに全種類少しずついただきましょうか」

「いいんですか?」

 本当は全部食べてみたいと思っていたが、さすがに図々しいかと思い黙っていた。

 けれど修吾は見透かしたように提案してくれ、少し経ってから黒い正方形のプレートに、少しずつカットされたチーズとドライフルーツが並んだ。

「いただきます……」

 説明された中には山羊のチーズや羊のチーズ、聞き慣れないウォッシュチーズという物もあり、知っているのはハードチーズとカマンベールチーズだ。

 加えてティースプーン一杯のアカシアの蜂蜜と一緒に食べると、今まで酒のつまみぐらいにしか思っていなかったチーズが、デザートのように美味しく感じた。

「……ん、美味しい……!」

 コクと風味のあるチーズに思わず笑顔になると、向かいで修吾も笑ってくれる。
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