最低で大嫌いなあなた、結婚してください
「綺麗ですね」

 鞠花は修吾に誘われて、品川にある水族館に来ていた。

 入り口から入ってすぐイルカやアシカが見られ、色とりどりの魚を見ながら歩いて行く。

 屋内は薄暗いため、ライトアップされた水槽の青がとても神秘的に見えた。

 時刻は午後で、午前中は修吾と一緒にお台場にあるプロジェクションマッピングのミュージアムに行き、そのあと豊洲で高級寿司を頂いた。

 現在は水族館にいて、このあとは東京駅付近まで行ってディナーの予定だ。

 修吾と手を繋いで水槽のトンネルをくぐると、とてもロマンチックな気持ちになった。

 色とりどりの魚やウミガメなどを心ゆくまで鑑賞したあと、幻想的なクラゲの水槽を見てぼんやりと時間を過ごす。

(あ……)

 不意に鞠花は、水槽に自分と修吾の姿が映っているのを見て我に返る。

(私、こんな格好いい人とデートしてるんだ)

 続いて繋がれた手を見て、じわりと頬を染める。

 水族館を出る頃には、時刻は十五時すぎになっていた。

「綺麗だったな」

 何度かデートを繰り返すうちに、修吾の口調はカジュアルなものになっている。

 鞠花もそれに慣れ、以前よりも心の距離が縮まったように思えて嬉しく思っていた。

「ええ、とても綺麗でした! 水族館は近場にあると思っても、なかなか行かないので楽しかったです」

 ニコニコして返事をすると、修吾も満足そうに笑ってくれた。





 その後、車で移動して銀座に行き、少し歩く。

「鞠花、一つ提案があるんだけど」

「はい?」

「以前に俺は君に過度なプレゼントはしないと言ったけど、一回のデートに一つプレゼントするのはどうだ?」

「そうですね……」

 考えるけれど、それぐらいなら許容範囲のような気がして頷いた。

「……あまり高価ではない物なら……」

 おずおずと頷くと、修吾はにっこり笑って「じゃあ行こうか」と銀座にある有名百貨店に向かった。
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