最低で大嫌いなあなた、結婚してください
 百貨店に着くと外商が二人を迎え、VIPのみが入れるというサロンに向かった。

 カフェのように飲み物を出されてコーヒーをいただいていると、外商部の人たちが鞠花に似合いそうなワンピースやアクセサリー、コスメなどを並べていく。

(もしかして……、お金持ちのこういう買い物って、この状況で一つしか買わなかったら修吾さんの恥になるのでは……)

 普段さほど興味はないが、面白そうな動画はないか色々見ていた中で、何の仕事をしているか分からない美人な女性が、【一千万の買い物をしました!】というサムネイルの動画を見つけた。

 興味本位で見てみると、自宅に外商がやって来て商品を並べ、あれこれ試着をして次々にお買い上げしていく動画で、自分とは住む世界が違うのだな……と、嫉妬を通り越して感心してしまった。

 恐らく、そうやって派手に浪費する事をアピールするのも、インフルエンサーとして稼ぐ手段の一つなのだろう。

 動画のコメント欄では賛否両論色んな意見があったが、大勢の人に見られていたので、ある程度の収益は見込まれる。

(ああいう人たちって、アンチコメントありきでやっているから、ハートが強いなぁ)

 ボーッとしていると、修吾に話しかけられる。

「何か気に入った物はあった?」

「えっ? は、はいっ!」

 ぼんやりしていた事を指摘された気がして、シャキッと背筋を伸ばした鞠花は、困った表情で服やアクセサリー、バッグに靴などを見ていく。

 けれどデパコスの一つぐらいなら自力で買えるが、他の物は自分の給料どれぐらい分だろう、と思うと途方に暮れてしまう。

 修吾が「鞠花の雰囲気に合いそう」と言ったブティックで、シンプルだがシルエットのいいワンピースを買ってもらう事になった。

 鞠花に気を遣ってハイブランドの物はやめたみたいだが、国内のアパレルブランドでも十分に高価な物である。

「良ければ、フィッティングルームもございますので、お気軽にどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 そうは言っても、一着幾らするか分からない服に、気軽に腕を通せない。

 迷いに迷っていると外商部の女性が鏡を前に服を当ててみたり、バッグを持たせてくれたり、色々気を遣ってくれた。

 そうされるのも居たたまれないので、一番価格が安そうなコスメにする事にした。
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