最低で大嫌いなあなた、結婚してください
「……でも、出会ったばかりなのに、デートしてエッチしたから付き合うなんていいんでしょうか?」

 それじゃあ、あまりに安直すぎる。

 鞠花は続く言葉を呑み込んだ。

 人を好きになるなら、高尚な理由があるべきとは考えていない。

 けれど自分と修吾の場合、何もかもが急すぎるし、鞠花が納得できる理由がない。

「鞠花は俺の事が好き?」

 尋ねられ、彼女は視線を泳がせて赤面したあと、コクンと頷いた。

「ならいいじゃないか。付き合う事において、一番大事なのは本人同士の気持ちだと思う。出会ったきっかけや、知り合ってからの時間が重要なら、マチアプ婚や一目惚れ電撃結婚の人とかはどうなる?」

「……そうですね」

 自分がかなり視野の狭いものの見方をしていた事に気づき、鞠花は反省する。

「たとえばマチアプ婚とかなら、高齢の方には馴染みがないだろうから、あまりいい顔はされないかもしれない。今でこそ割と普通になっているかもしれないけど、デキ婚とかも『はしたない』とかね。……でも、第三者にどう思われようがいいじゃないか。俺は鞠花の勇気と優しさに惹かれた。鞠花にとっては色んな事が突然すぎて受け入れられず、戸惑う気持ちがあるのも分かる。……でも、恋愛や結婚にどんなヒストリーがあるかは、そのカップルで千差万別だ。人と比べなくていいんだよ」

 深い納得を得た鞠花は、小さく笑い、自分の価値観を語っていく。

「……私、恋愛経験が少ないんです。お話した通り、両親が亡くなってしまったので、今まで彼氏ができても、恋愛に夢中になる事ってできませんでした。何があってもまず『しっかり生活していかないと』という気持ちが強くて、元彼が『将来こうなったらいいな』と抽象的な話をしているのを聞いていると、『現実的じゃない』と冷めてしまっていました。だから、付き合う、結婚するって言うと、しっかりとした基板がないと駄目なんだと思っていたんです」

 修吾は鞠花の手を握って言う。

「それぞれ、色んな価値観があるよな。俺は鞠花と真逆で、嫌みかもしれないが、環境に恵まれていたから、恋愛は片手間に楽しんでいる感じだった。本気になれなかったんだ。好意を持って近付いてくる女性のほとんどは、俺の外見や家柄、社会的地位に財産が目当てだった。最初は嫌悪感一杯だったけど、そのうち開き直って『それなら利用してやればいいんだ』って最低な事を考え始めた」

 自嘲する修吾の話を聞いて、鞠花は「気持ちは理解はできます」と返事をする。
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